カナダのインクルーシブ教育 ~本当のインクルーシビティとは~
皆さんは「インクルーシブ教育」という言葉を聞いたことがありますか?
日本ではまだ馴染みのない言葉かもしれません。
インクルーシブ教育とは、「障がいを持つ生徒も持たない生徒も一緒に同じ学校、同じ教室で学ぼう」という考え方です。
カナダはこのインクルーシブ教育、そして社会全体のインクルーシビティを重視し、実践している国です。
僕がカナダに留学する大きな目的の一つがインクルーシブ教育について学ぶことでした。
今回は僕がバンクーバーの高校に通う中で、実際に肌で感じたことを紹介したいと思います。
「どこを区別し、どこを一緒にするのか」
インクルーシブ教育と言っても、「みんな同じ教室で学べばいいだけ、みんな同じ教室に放り込もう」、というのは完全に間違った考え方です。
言葉にすると、「そんなのは当然だ」と思われる方が多いかもしれませんが、実際はこの気づかずに犯されている間違いによって、日本のインクルーシブ教育が上手くまわっていないのだと思います。
「インクルーシビティ」「包括性」と言っても、何もかもも一緒にすればいい訳ではありません。
個々のサポートが必要なところは、その生徒に応じた違うサポートをするというのが、本当のインクルーシブ教育なのです。
高校のインクルーシブ教育
僕の通うバンクーバーの学校は知的障がいを持つ生徒がたくさんいます。
今回は実際に、どのようにインクルーシブ教育が行われているのか紹介したいと思います。
特別学級
まず、高校の中には特別学級があります。
障がいを持つ人、特別なサポートが必要な人がこのクラスに入っています。
このクラスには15人ほどの生徒に4人の先生がついています。
他のクラスにはないホームルームが行われていたり、パソコンルームでのIT授業や職業訓練で近くのスーパーで働くというようなこともやっているようです。
ここまで読んで、「日本と同じだ」「普通だ」と思った方、
そうなんです。何度も繰り返しているように、インクルーシブ教育と言ってもただ特別学級を廃止すればいいという訳ではないのです。
アカデミックな科目は?
基本的に、アカデミックな科目、英語、数学、理科、社会などは、基本的に分かれて授業を行います。
障がいを持つ生徒は特別学級で授業を受けたり、学年を少し下げたクラスに入っていることもあるようです。
もちろん、特別学級以外のクラスで授業を受けるときはサポートの先生がついています。
ノンアカデミックな科目は? 体育など
体育や美術などのアカデミックでない教科は、他の生徒と同じ授業に出席することが多いです。
そして言うまでもなく、そのような場合はサポートの先生がついています。
ただ、サポートの先生の割合はアカデミックなクラスに比べると低いようです。
2~3人の生徒に一人の先生と言うような割合でしょうか。
生徒の希望に応じて、どんなクラスを取るか決めている。そんなイメージです。
この「柔軟さ」こそが、インクルーシブ教育の一つのキーワードではないかと思います。
特別学級に入らない生徒も
実は、障がいを持っていても特別学級に入らなくてはいけないという訳ではないのです。
ある生徒は軽い知的障がいを持っていますが、完全に他の生徒と同じような授業を取っています。
勘違いしないでほしいのは、この生徒さんにもしっかりサポートの先生がついているということです。
まとめ
おそらく、インクルーシブ教育を実践するのには、多くの時間とお金がかかると思います。
決して、インクルーシブ教育が障がい者に対する教育費の削減などと言う名目で動いているわけではありません。
今、説明して分かったように、インクルーシブ教育を実践するためには、たくさんのサポートが必要なのです。
もしかしたら、完全に別々の学校に通うより多くのお金が費やされているのかもしれません。
しかし、僕はこのインクルーシブ教育はそれだけの価値があると思います。
「会社で何%障がい者を雇用しなければならない」などと言っても、別々に教育を受け、別々に育ってきた人たちがそんなことを簡単にできる訳がないじゃないですか。
小さいうちからインクルーシブな世界で育つことで、「普通に」障がいを持つ人も持たない人も一緒に社会で暮らしていけるような価値観が育つのだと思います。
そして、僕自身もインクルーシブ教育によって助けられ、学ばされました。
初めてのカナダの学校で緊張していた9月、明るく声をかけてくれたのが特別学級の生徒の一人でした。
特別学級の生徒はみんな優しく、もちろん今でも僕のとてもいい友達です。
彼らと友達になれて、本当に良かったなと心の底から感じています。