カナダでインクルーシブ教育を行う先生が考える「大事な事」
先日、僕の通う高校でインクルーシブ教育を行っている担当のM先生とお話しする機会がありました。
インクルーシブ教育の最前線で働く人たちは何を考えながら、働いているのでしょうか。
今日はM先生が話してくださったことをお伝えしたいと思います。
なぜ、この職を志したか
M先生は高校生の時、コミュニティーセンターでボランティア活動をしていたそうです。
ちなみに、カナダの高校生にとってボランティア活動や仕事をする経験は大学に進学するのに必須です。
その中でもコミュニティーセンターでのボランティアは最も一般的なものと言っていいでしょう。
実際、僕もカナダのコミュニティーセンターでボランティアをしていた経験があります。
話はそれましたが、M先生にとってこのボランティア活動が人生を変える経験になったそうです。
M先生が高校生だったのは1980年代、下の記事でも説明しているようにまだまだインクルーシブ教育は一般的ではなく、インクルーシビティもバンクーバーに広がっているとは言えない状況でした。
そんな中で、M先生はコミュニティーセンターで出会った障がいを持つ人ととても良い友達になったそうです。
これは僕もカナダの高校で、知的障がいを持つ友達と関わって感じたことですが、彼らは本当に優しいです。
僕自身も彼らの優しさに救われたことがたくさんあります。
しかしそれと同時に、M先生は彼らが差別的に扱われていることにショックを受けたそうです。
そして、その経験によってM先生は特別支援教育、インクルーシブ教育という分野に進むことを決めました。
インクルーシブ教育を進めるうえで大切なこと
As Many Choices as Possible
M先生との話の中で一番心に残ったのがこの言葉です。
「生徒たちは一人ひとり違うから、私は彼らにできるだけ多くの選択肢を示してあげたい」
なるほど、これがインクルーシブ教育の成功の秘訣かもしれないと思いました。
「多くの選択肢を示し、生徒自身とその親と話したうえで最善の道をとりたい」とおっしゃっていました。
どんな教科をとるのか。どんな課外活動をするのか。
同じ高校に通っていても、教科の取り方で学校生活は180度変わります。
ひとまとめに扱われるのではなく、個々の興味や関心、得手不得手などを考慮したうえで最善の道を模索するのは、障がいの有無に関わらず大切なことだと感じます。
現在、M先生のクラスには15人の生徒がいるそうです。
人数が増えるにつれ、一人ひとりのニーズに合わせるのは大変になってきたそうですが、これからもそれぞれの生徒に合わせた教育をしたいとおっしゃっていました。
スタッフ、教員との目的の共有
学校でのインクルーシブ教育に関わるスタッフの人数が増える中で、全員が同じ目的をもって同じ方向に進むことは大切だと感じていると教えてくれました。
M先生は、生徒たちが最終的に仕事を持ち、自立した生活ができるようになってほしい、と話していました。
そのために、近くのスーパーで働くという職業訓練の授業もグレード10、つまり日本での高校1年生から行っているそうです。
この目的の共有という話は、特別支援教育という分野以外でも同じことだと思います。
モンテッソーリ教育のように、障がい者に対する教育は実は一般的に考えても重要な事だったりするのではないでしょうか。
まとめ
M先生が話してくれた2つの大切な事。それは、思っていた以上に普遍的な事でした。
ただ、それがどれだけ大切かは自分自身も留学生と言うマイノリティ、サポートしてもらう立場になって初めて実感しています。
インクルーシブ教育がどのように行われているのかを知ることは、教育全体について考えることにも役立つのではないでしょうか。